離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「ちょっと豪華すぎ……」
キングサイズのベッドが部屋の中央に鎮座する部屋に案内され、私は思わず独りごちた。
手頃そうなホテルを調べて片っ端からあたっていったのだが、空きがここしかなかったのだ。
よりによって、ひとりで泊まるには持て余すスイートルーム。夜になると、窓からライトアップされたアクロポリスと街の夜景が楽しめるそう。
急なキャンセルが出たらしく、案内してくれたベルスタッフは『とてもラッキーですよ』と微笑んでいた。
「ラッキー……なわけないじゃん」
ダマスク柄のカバーがかかったベッドにぼふっと倒れ込み、ため息をつく。司波さんからはあれ以来連絡がない。立てこもりはまだ膠着状態なのだろうか。
ベッドに横になったまま両手でスマホを持ち、ニュースが更新されていないかチェックしようとしたその時だ。
ブブ、と手の中でスマホが振動し始め、画面に【真紘さん】の四文字が表示される。
飛び起きた私は迷わず応答マークに触れ、スマホを耳に当てた。