離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 どれくらい眠っていたのだろう。ノックの音で目が覚め、パッと窓の方を見たら、すっかり外は真っ暗だった。

 ぼんやりしながら瞬きを繰り返していると、再びノックの音が鳴る。続けて、「寝ちゃった?」と尋ねる真紘さんの声も。

「真紘さん……!」

 ようやく我に返った私は慌ててベッドから下り、絨毯につまずきながらもドアの方へ向かう。

 ドキドキしながらドアを開けると、スーツ姿の真紘さんが立っていた。

 少し疲れた表情にも見えたけれど、私と目が合ってすぐ瞳にいつもの輝きが戻り、ふわりと微笑む。

「やっと会えた」

 噛みしめるように言った彼は、部屋に入ってくると同時に私を抱き寄せ、腕に閉じ込めた。

 以前と変わらないぬくもりと、真紘さんの香り。ぴたりと顔を寄せた胸からはしっかりと鼓動の音が聞こえて、本当に無事でよかったと、改めて安堵の思いに浸った。

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