離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「今、俺も単身赴任で愛する妻と離れているんですって言ったら、犯人の顔色が少し変わったのがわかった。だから、彼の境遇に共感しつつ、なんとか妥協点を探って、必死で話をしたよ。その間、ずっと佳乃のことを考えてた。だから、交渉が成功したのは佳乃のお陰」
真紘さんが、穏やかな瞳に私の姿を映す。私はなにもしていないけれど、離れている間も彼の心にはちゃんと私がいたんだなと感じて、幸福な気持ちになる。
「お役に立てて、光栄です」
そう言って微笑むと、真紘さんがそっと手のひらで私の頬に触れ、愛おし気に目を細める。
ドキン、と胸が鳴り、おずおず彼と視線を絡めた。
「久しぶりにキス、していい?」
「ダメって言うと思いますか?」
「ううん。……してくださいって顔、してる」
親指でツッと私の下唇をなぞった彼は、口の端を少しだけ引き上げて色っぽい笑みを浮かべ、私の唇に自分のそれを重ねた。
再会してから、初めてのキス……。離れるまでは何十回も何百回も交わしてきたはずなのに、久しぶりなので気恥ずかしい。
「明日からはどこへ行きたい? 今日一日潰れちゃったから、残りの休暇は佳乃の行きたいところへ行こう」