離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 真紘さんは、財務省主計局に籍を置くいわゆるキャリア官僚。三十四歳という若さにして幹部候補と名高いエリートである。

 お父様は世界的な投資家、お母様は元女優で、幼少期はご両親とともに海外を飛び回っていたらしい。

 そうした家庭環境に加えて人並み以上の知的好奇心を持つ彼は、日本語と英語はもちろん、日常会話なら七カ国語を操れるというマルチリンガル。

 趣味や特技も多才で、ピアノとバイオリンが弾けるほか、学生時代にバーテンダーのアルバイト経験まであるというのだから、驚きである。

 そんなスペックに加え、真紘さんはスタイルや容姿も完璧。

 一八〇センチ近くはある長身で、細身ながら程よい筋肉がついているのが、スーツの上からでもわかる。黒髪にナチュラルなパーマをかけたヘアスタイルがあか抜けた印象で、目鼻立ちがくっきりしている。さすが、元女優の息子といった感じだ。

 政略結婚前提のお見合いとはいえ、こうまで完璧な男性と向き合って緊張しない女性はいないだろう。

 私もなんとか見劣りしないようにと、肩下で揺れるストレートの髪は美容院で綺麗なアップにしてもらい、牡丹柄の赤い振袖に身を包んだ。

 そうして品よく父の隣に座っていたつもりだが、残念ながらお見合い自体はあまり盛り上がっていなかった。

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