離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
『あ、あの……?』
『ごめんね、怖い顔して。でも、これには理由があるんだ』
彼の変貌ぶりに目をぱちくりさせる私に構わず、真紘さんが饒舌に話しだす。
『職場に親しい同僚がふたりいるんだけど、ひとりは寡黙で硬派ないかにもつまんない男、もうひとりは男女関係なく優しさ皆無のあまのじゃく男。なのに、ふたりとも俺より先に結婚相手見つけて、今では幸せな家庭を築いてるんだ』
真紘さんは不満げに口をとがらせ、窓の外の庭園に視線を投げる。そんな仕草にすら育ちのよさが漂い、奔放な言葉遣いも不思議と嫌な感じがしなかった。
『だから、ニコニコしてるより無愛想にツンとしてた方が女性に好感が持たれるのかと思って、試してみたんだけど』
真紘さんの瞳がくるんと動いて、私の方に戻ってくる。まっすぐに見つめられ、胸の奥が微かに揺れ動く。
『佳乃さんがどんどん不安そうな顔になってきたから、おしまいにする。軽薄そうとか言われることもあるけど、よくしゃべるこっちの俺がホントの柳澤真紘です。改めて、よろしく』