離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
冷たいと思い込んでいた彼が人懐っこく微笑んだその一瞬で、不覚にもきゅんとしてしまった。
ほんの短い間でギャップを演出したのは、確信犯か否か。どちらにしろ、女性の扱いには慣れていそうだ。
『そうだったんですね。……あの、どうしてこの縁談を断らなかったんです? 政略結婚で一生の相手を決めてしまうことにためらいはありませんでしたか?』
彼の態度がやわらかくなったタイミングで、私はずっと気になっていたことを尋ねてみた。
自分自身は、ある理由から恋愛結婚をすでに諦めている。しかし、彼のようにどんな女性も手に入りそうな人が、政略結婚を選ぶ理由がわからなかった。
『俺、この人を好きになろうって決めたら、本当になれるタイプなんです。佳乃さんのことも、絶対に好きになる』
間髪入れずに答えた彼の眼差しは、真剣そのもの。
根拠なんてないだろうに、どうしてそんな自信たっぷりに宣言できるの?
真紘さんの思考回路が理解できず、ただ瞬きを繰り返す。
『私に、どんな欠点があってもですか?』
無意識に、自分の胸元に視線を落として尋ねた。着物が着崩れないのはいいけれど、それ以外に利点なんてひとつもない、貧相な胸。
恋愛結婚を諦めたのも、この胸のせいだ。