離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
『むしろ、欠点を補い合うのが結婚じゃないですか?』
俯いていた私の耳に、真紘さんの凛とした声が届く。
『ほら、鍵と鍵穴の関係っていうか……あっ、決してエッチな意味じゃないですよ!』
私はなにも言っていないのに、両手を前に出してブンブン振る慌てた彼の姿がおかしくて、くすりと笑う。真紘さんはホッとしたように息をつくと、小首をかしげて微笑んだ。
『やっと笑わせられました』
『えっ?』
『俺、女性にモテる方じゃないので、今日は佳乃さんに気に入られようと必死だったんです。同僚の実績にすがるように変な実験をしたのもそのせいで』
『嘘……。そんなにカッコいいのにですか?』
つい本音を口に出してしまってから、あっと思い両手で口元を覆った。
私ってば恥ずかしいことを……!
上目遣いで真紘さんの表情を窺うと、彼はなぜかギュッと目を閉じ、銃で撃たれたかのように胸元を押さえていた。
『ま、真紘さん?』
『すみません、胸に重傷を負いました』
『えっ、大丈夫ですか……!?』