離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

「すごい、ロボットがいっぱい……」

 デスクやキャビネット、出窓の床板の上など、そこかしこに大きさや形もさまざまなロボットが飾ってあった。絨毯の敷かれた床では、ロボット掃除機も稼働中だ。

 ぽかんとしながら部屋を見回していると、専務がぬっと私の前に立った。

 怒られる、と身構えたその瞬間、専務の人差し指が、私の胸につけられた名札のバッジを軽くトンと叩いた。

「柳澤佳乃。旧姓は〝朝香佳乃〟なんだってな」
「えっ? ……はい、そうですが」

 なぜ、私の旧姓なんかに興味があるのだろう。

 遠慮がちに専務を見上げると、鋭い瞳にまっすぐ見つめ返された。その視線になんとなく攻撃的なものを感じて、ごくりと息をのむ。

「国会議員の朝香重蔵の娘っていうのは本当なのか?」
「ほ、本当です」
「ふうん。じゃ、あのデカパイに手を出すより、既婚者かつ、大物の父親を持つあんたを傷つけた方が効果的なのかもな」

 専務が一歩私との距離を詰め、至近距離まで顔を近づけてくる。

 なんなの? デカパイって……もしかして、雨音さんのこと? そんな言い方をするなんて、やっぱりとんだセクハラ野郎じゃない。

 にしても、接近しすぎなんですけど……!

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