離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「あの、さっきからなにを?」
恐怖でじりじりと身を引きつつ、専務に尋ねる。彼は私の前で小さくため息をつくと、一度体を戻して、そばの棚の上に置かれたテンマくんに似たロボットに手を伸ばした。
「コイツ、受付のテンマくんの初号機なんだ。ハードの設計もソフトの開発も、俺がひとりで手掛けた」
ロボットの丸い頭部をぽんぽんと優しく叩き、専務が言う。先ほどセクハラまがいの発言をした人物とは思えない、穏やかな表情だ。
専務のそんな人間味のある表情、初めて見た。
「……我が子、なんですね」
なぜ急にロボットのことを語り出したのかは知らないが、話を合わせる。
きっと彼はこのロボットのことが好きなんだろうと、なんとなくわかったから。
「子どもの頃からロボットの開発者になるのが夢で、大学でもロボット工学を専攻した。在学中に、優れたロボットとその開発者に贈られる賞ももらった」
専務の視線が、壁際のガラスキャビネットに向けられる。その中には、当時もらったのであろう賞の楯が飾られていた。中央に金色のロボットが輝く、立派なものだ。