離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
そのまま苦しげに畳に手をついた彼に、慌てて駆け寄る。着物の動きにくさをもどかしく思いつつ彼のそばにしゃがみ、背中にそっと手を当てた。
『しかも、優しいし、かわいいし……ダメだ、好き』
『な、なにを言ってるんですか? 救急車呼びますか?』
具合が悪いせいか、変なことを口走る真紘さん。心配になって顔を覗き込むと、急に起き上がった彼が私の正面に正座し、ギュッと両手を握ってきた。
『結婚しよう、佳乃さん。きみと夫婦になって、本気の恋愛がしたい』
ほ、本気の恋愛……? 胸の痛みはもういいのだろうか。
ころころ態度の変わる真紘さんに面喰らって、私は目をぱちくりさせる。
『あ、あの……具合は?』
『平気。佳乃さんに結婚を断られなければ』
真紘さんはそう言って、甘えた目をする。政略結婚前提のお見合いでまさかこんな展開になるとは思わず、私は軽くパニックに陥る。
なぜかわからないけれど、真紘さんは私を気に入ってくれたようだ。しかも、恋愛したいとまで言ってくれている。
……私にも、まだ恋愛ができるのかな。
戸惑いながら真紘さんを見つめ返し、自問自答する。