離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
誰にも引き留められない人生――side真紘
『また別の国に行くの? いいなぁ、楽しそうで』
『頭がよくて人気者の真紘ならすぐ新しい友達ができるよ』
少年時代、どの土地にも短期間しかいられない俺には、本当の友達がいなかった。
早く周囲に馴染めるようにと必死でその土地の言語を習得しても、両親の仕事の都合でまたすぐに旅立つことになってしまうからだ。
そのせいでいじめられたり無視されたりといった苦い経験があるわけではないのだが、教師が俺の転校を継げても別れを惜しむ者は誰もおらず、子どもの俺にとっては悲しかった。
それでもやっぱり友達が欲しくて、次の土地でも努力する。あらゆる国の言語を操り、常に笑顔で、ユーモアも忘れない。
そんな、底抜けに明るいヤツを演じ続けた俺は、いつしか本当に〝別れ〟に対してなにも感じないようになっていた。