離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
帰国してからも、〝なんでもソツなくこなす俺〟は広く浅く人間関係を築き、学生時代をそれなりに謳歌した。
大学四年時には難易度Sランクとも言われる国家公務員総合職試験に合格し、財務省に入省。
省内での異動を何度か経験しつつ、スーパーエリート集団と呼ばれる主計局の一員になった。
国家予算の編成、決算の作成、会計制度の企画立案を行う主計局は、他省庁に対しても圧倒的な力を持つ巨大権力。この手で日本を動かしているという実感、やりがいは何物にも代えがたい。
直属の上司である主計官の雨郡さん、そして同僚の司波とともに、仕事の後よく酒を飲みながら青臭いことを語ったものだ。
集合場所はだいたい、当時まだ独身だった司波のマンション。司波はお得意の迷惑そうなしかめ面をしつつも、毎回俺たちを追い返すことはなかった。
『これから日本はどうなると思う? 司波、柳澤』
頭もいいが肉体派でもある雨郡さんが、ソファに座る俺たちの傍らでスクワットをしながら聞く。スーツもシャツも脱ぎ捨て、アメフトで鍛えた逆三角形の肉体に汗を滴らせている。