誘拐婚〜ある日、白無垢が贈られて〜

「そういえば、今日はいつもより動いていたな。何かあったのか？お前は嫌なことがあると仕事を普段以上にするからな」

計にジッと見つめられ、雅はずっと見られていたことにドキッとしてしまう。決して恋のトキメキではない。驚きの方だ。

「……気付いていたんですか……」

何故か、うまい言い訳を考えることができず、雅は今まで誰にも話したことのなかった花嫁道具のことについてポロリと話す。

「正直、一生使うことのない道具たちだと思うんですけどね……」

「結婚には興味ないのか？」

「周りは結婚して、出産している友達だって何人もいますよ。でも私は仕事が楽しいし、友達の旦那の愚痴とか聞いていたら、結婚する必要性ってあるのかなって思って、結婚を前向きに考えることはできないです」

「旦那の愚痴って？」

計に訊ねられ、雅は電話をかけてきた友達のことを頭を浮かべる。電話を出た瞬間、「聞いてよ、もう！！」とすごい剣幕で愚痴を延々と聞かされたのだ。