誘拐婚〜ある日、白無垢が贈られて〜
夕食を食べて片付けを済ませた後はお風呂に入り、録画してあった好きなバラエティ番組を見て十一時頃にベッドに入る。ベッドの中に入ると、すぐに眠気が押し寄せてきた。

(明日も仕事頑張ろう)

そろそろ給料日が近付いてきている。節約をしていることと独身ということもあり、貯金はかなりある方だ。せっかくだし、どこかへ日帰り旅行にでも行こうかと考えているうちに眠ってしまう。

朝に目を覚まして、またいつも通りに仕事をする。そんな当たり前を雅は信じて疑わなかった。

「ーーーろ。起きろ」

体を優しく揺さぶられ、雅は目を開けて枕元に置かれている時計を見る。まだ夜中の二時だ。こんな時間に起きたことなど一度もない。雅がボウッとする頭でそんなことを考えていると、何者かの手が伸びてきて時計を奪う。

「俺といるのに時間を気にする必要があるのか?」

聞き慣れた声に雅が体を起こすと、そこには計が立っていた。計に自宅の場所を教えたことがなく、玄関や窓の鍵も閉めたはずだ。なのに、計はニコニコと雅を見て笑っている。それに雅は恐怖を覚え始めた。
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