誘拐婚〜ある日、白無垢が贈られて〜
雅の前に計は立ち、雅は「やめて、来ないでください!」と言って計を突き飛ばそうとするも、その手は壁に押し付けられ、空いている片方の手で雅の視界は覆われてしまう。

「俺の家は、俺しか子どもがいないから早く結婚して子どもを作れってうるさくて家出さながらにこっちに来て、気まぐれに会社員になった。そこで雅を見つけたんだ。一目見た瞬間、運命だと思った。恋をするってこんな感情なんだと初めて知った。雅を見ているだけで、本当に幸せだったんだ……」

「でも、雅が他の男に仕事のことを教えていたり、男に褒められている姿を見ていると、苛立ちが募ってどうしようもなくなったよ。もう我慢の限界なんだ。……俺の嫁になれ」

そう言われた刹那、雅の意識は一瞬でなくなり、次に目を覚ました時、雅は白無垢を着て神社の本殿に向かって歩いていた。雅の隣には、紋付き袴を着た計が並んで歩いている。

「ひっ!」

周りにいる人たちを見た刹那、雅の口から悲鳴が漏れた。雅の逃げ道を塞ぐかのように取り囲んでいる人物たちは、着物を身につけているのだが、狐や鴉天狗や鬼など人間ではない。
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