美琴ちゃん、大丈夫?
シャトルラン、交差する視線、花のような人。
……そう言われてもなぁ。
ポンポンポンポン…♪
考え事をしながらドレミファソラシドの音に合わせて体育館の壁と壁を往復ダッシュする。
自信があろうがなかろうが、緊張しちゃうものはしちゃうし。
「…ダハァー!もうだめ!」
優花が崩れ落ちた。
「羽根村の記録、90回!」
でもずっと話せないまま卒業するのはさすがに…
ポンポンポンポン…♪
声が出せないのは、自分に対する甘えかもしれない。
ポンポンポンポン…♪
音がどんどん速くなる。
…うん、次こそは、絶対にちゃんと挨拶する…!
ポンポンポンポン…♪
あれ、周り誰もいない?
ポンポンポンポン…♪
「美琴かっこいいー!!がんばれ〜!」
優花の声。
ポンポンポンポン…♪
「柊!もうおしまいにしよう!」
先生の声。
ポンポン…。
「柊の記録、120回!」
体育館にわぁ!と歓声が響いた。
優花が手を広げて駆け寄ってくる。
「美琴すごい!すごい!女子最高記録だって!」
私の背中を両手でペシペシ叩いて興奮を表現する優花。
「ハァ、ハァ、ほんと?」
…まだいけそうだったな。
「柊さん、すご〜い。」
その消えそうな声にビクッと体が反応する。