美琴ちゃん、大丈夫?
いつも通りキヨマサ君の話を聞くでもなく聞きながら、恐る恐る前方に視線を戻してみる。
まるで何事もなかったかのように前を向いて歩いている、時山君とそのお友達グループ。
時山君の笑い声が聞こえる。
時山君の笑う横顔が見える。
さっきこちらにあったはずの視線は
隣で上目遣いして笑顔を向けるボブの女の子にある。
「柊さん?」
キヨマサ君が私の顔を覗き込んでいて、ハッとする。
「あ、ごめん。なに?」
「もしかしておなか痛い?」
「え?」
「なんか、うぅ~って何かを耐えてますって顔してる!」
キヨマサ君が顔をしかめておなかが痛い人を全身で表現する。
「…大丈夫。なんでもないよ」
キヨマサ君は、私に関して日に日に鋭くなってる気がする。
キヨマサ君との関係性もずっと変わらず
キヨマサ君から恋人関係になりたい!というアピールも特にないし、
ただただ毎日のように愛を伝えられるだけ。
キヨマサ君の話はたくさん聞いてきたけど、
結局何を考えてるのか、どうしたいのかはわからないままだった。
「もしかして時山?」
キヨマサ君がさらっと言ったその言葉に驚いて、私はバッと顔をあげた。