美琴ちゃん、大丈夫?
捨てた煩悩、推しの幸せ、名もない約束。
柊さんとキヨマサが、
見つめあっている。
「時山ー?」
瀬野が俺の名前を呼んだ。
でも俺はその光景から目が離せない。
キヨマサが珍しく真剣な眼差しで柊さんの両肩を持って
柊さんもなんだか少し恥ずかしそうに、キヨマサを見上げてなにか言葉を発してる。
「おーい時山ー?どうした?」
瀬野は俺の視線の先を見ようと、角から顔を出して目を細めた。
「わーお!白昼堂々こんな公衆の面前でようやるねぇ、あの名物カップル!」
「…だな。」
「時山ももしかしたら近いうちにあっち側になれるかもしんないよ?」
「どういう意味?」
いつも単純明快な瀬野のくせに、今日はニヤニヤしながら意味深なことを言う。
何か企んでる顔。
「まぁまぁはやく行こうぜ!みんなで勉強できるとこなくなる前に!」
「…おー。」
「なんだよ。珍しく機嫌悪いじゃん。」
「えっ…俺、機嫌悪い?」
「おう。この眉間の皺が何よりの証拠だ!」
そう言って瀬野が俺の眉間を指でぐりぐりと押してくる。
「おい!やめろコラ!」
「ねー!何してんのー?早く行こー!」
瀬野と眉間を押し合っていると、駅の改札へ続く階段から瀬野が好意を寄せているというユキちゃんが声を上げた。
「はーい!!」
瀬野が鼻の下を伸ばして元気に返事する。
「ほら、行きますよ時山さん!」
「なんで急に敬語?」
瀬野が俺の首に腕を回して無理矢理つれて行く。