美琴ちゃん、大丈夫?
そしてまた私たちは沈黙したまま電車に揺られ、ある駅で「あ、ここ」と時山君が降りて私もついていく。




あれ…もしかして、この駅って…



青々としたけやき並木のトンネルを抜けると可愛らしい門が現れた。





ここは、




「…遊園地!」


「うん。好き?」


時山君がニッと笑った。


「…好き。」


好きっていうか、大好き。

子供たちが嬉しそうに走って中に入っていく様子にひどく共感する。


「はは、実はリサーチしちゃった。柊さんの行きたそうなとこどこか九条に聞いて。」


「えっ」



…私の行きたいところ、連れてきてくれたんだ。



時山君がニコニコしたまま「ん?」と私の顔を見る。



「…あの…聞いてもいいかな」


「うん。なんでも。」


「今日って、その……デート、なの?」




その言葉に、時山君が私の顔を見たままかたまった。




「…俺昨日なんて言ったっけ」


「明日の朝9時、春寝駅に迎えに行く。」


「それだけ?」


「うん」


「なんと…」


時山君が血の気の引いた顔で天を仰ぎおでこに手を当てると、目を閉じて何かを考え始める。


「えっとー……ンンッ。」


時山君が私の方に向き直って咳払いをした。





「柊さん。」


「えっ、は、はい」


「今日一日、俺と、デートしてください。」


「!」



時山君が人目もはばからず私をまっすぐ見て言った。


周りのニヤニヤとした視線が少し、痛い。


…けど。


素直に嬉しい、かも。
< 133 / 189 >

この作品をシェア

pagetop