美琴ちゃん、大丈夫?
「…」


明らかに普通じゃない。


こんな何度も、しかも色んな場所に広範囲で出会うなんて。


でも不思議と怖くないのは、この子がまるで敵意を持っていなくて無邪気に、それでいて健気に何かを伝えようとしているのが分かるからだ。




「…君、いつもどうして私についてきてるの?何か言いたいことがあるの?」


しゃがんで猫に話しかける。


「ニャー」



猫も真ん丸な目で私に話しかけてる。


当たり前だけど、何を言ってるのかわからない。

でもやっぱり、私に何かを伝えようとしてる。






「……柊さん?」



上から時山君の心配そうな声が落ちてきて、ハッと顔をあげる。



「あ…えっと、あのね」


「誰と話してるの?」


「え?」


視線を下に戻すと、猫は…


いる。


確かにいる。



「……もしかして、見えない?」


「え?…はは、急に真顔で怖い冗談やめてよ。」


「…」


時山君の様子からして、本当に見えてなさそうだ。

そういえば前に優花も見えてなかった。

もう一度足元の猫に視線を戻す。


「ニャー。」



いつもすぐ逃げてしまうのに、今日は逃げずに足にフワフワの毛をスリスリしてくる。



「…フフ。くすぐったい。」


「…柊さん?」


時山君が、困惑してかたまっている。

これ以上怖がらせてはいけないな…。


「…あはは。なーんちゃって。」


「…あ、あー、ビックリしたー。今、頭の中でよにきものテーマソング流れてたわ」


時山君が胸に手を当てて大きく息を吐いた。


「ごめん、緊張しちゃって、…そう、和ませようと思って…」

何とかごまかしながら、足元の猫をまた見やると呑気に頭を足でかいてる。



…おーい。君のせいだぞ。
< 135 / 189 >

この作品をシェア

pagetop