美琴ちゃん、大丈夫?
「…じゃ、行こっか。」
ちょっと声のトーンを落とした時山君がポケットに手を入れて歩き出した。
…そっか。
タイミングがタイミングだったから手をつなぐの嫌なんだって思ったよね。
私は足元の猫にこっそり話しかける。
「…一緒に行く?」
「ニャー」
私が歩き出すと猫も歩き始めた。
この子がなんなのか、一緒にいたら分かるかもしれない。
きっとただの霊的なそれじゃないと思う。
それは勘というか…分からないけどなんとなく確信をもってそう思った。
何か意味があるって。
私が先を行く時山君に小走りで追いついて見上げると、時山君は少し申し訳なさそうに「ん?」と私を見る。
「あの……手…つなぐ?」
うわ、改めて言うの、すっごい恥ずかしい。
「え…いいの?」
時山君の目が嬉しそうに輝く。
「うん…つなぎたい。」
時山君の分かりやすい表情が可愛くて、顔がほころんだ。
「…もしかして俺のこと、弄んでます?」
「えっ?そ、そんなことしないよ!」
どちらかというと私、十分あなたに弄ばれてます。
慌てて訂正する私に今度は時山君がははっと笑う。
「まぁいいや。じゃー、はい。」
クシャッとした可愛い笑顔で左手を差し出した。
私がその左手に自分の右手を預けると、時山君はギュッと握って「やった。」と少年っぽく笑った。