美琴ちゃん、大丈夫?

夕映の観覧車、涙声、スーツの人。

時刻は16時。


すっかり日が傾いて、夕日が遊園地を暖かい光で包み込む。



私たちは観覧車の行列に並んで順番を待っていた。



夕日を浴びていると、いやでも昨日の電車でのことを思い出してしまう。

私のカバンに入って眠る子猫に、そろそろどういうことか教えてくれない?と心の中で呟いた。

するとそれが聞こえたのか子猫が目を開けないままに「ニャ」と鳴いた。


…だから分かんないってば。


私は時山君に聞こえないように小さくため息をついた。



それにしても、観覧車ってカップルだらけなんだな。

並んでる人、全部カップルだ。



後ろに並ぶカップルの声が聞こえてくる。






「知ってる?これ一周回るまでにキスすると、永遠に結ばれるんだって♡」

「あー、よくあるやつね」

「ここのは本当だよ!こないだ結婚したモデルのセイヤとまきちょすも来たんだって!あと松田夫婦も!」

「へー。」

「…カイ君、信じてないでしょ?恋人たちの聖地として有名なんだから!」

「ふーん。」

「ねー、もうちょっと興味持ってよ〜!」

「元々するつもりだったから関係ねーな。」

「え」

「濃い〜やつ」

「カイ君♡」
















時山君はわたしと反対の方向を見ている。


…あ


耳が赤い。









「お待たせしましたー!2名様こちらへどうぞ!」



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