美琴ちゃん、大丈夫?
そう言ってもう一度口付けようとするその人に、私が待ったをかける。
「…え?」
「ん?」
「今の……プロポーズ?」
「あ」
まんまるの目でしまった、という顔をする。
「プロポーズ……ですか?」
…いや、私に聞かれても。
「…やり直します?」
「はい。すみません。改めてやり直します。今度。必ず。」
「…フッ。」
あまりに真顔で言うもんだから私は堪えきれずに吹き出した。
「あはは!」
「…やらかした。やらかした。最悪だ。めっちゃ準備してたのに。」
彼は顔を両手で覆って縮こまり、ぶつぶつ後悔を漏らしてる。
「そうだったんですか?」
「あ、だめ。もう聞かないで。」
「聞いてないですよ、そっちが勝手に言ってるんじゃないですか。」
「あー!もー!美琴さんが可愛いのがいけない!なんなんだよ、何でそんな可愛いんだよ!ばか!」
「なんですかそれ…ヤケクソにも程がありますよ」
「もういい。お仕置きだ。脱ぎなさい。」
「え!?ちょっと…!」
「非番でしょ?」
「ですけど…え、待って!」
「待ーたーない」
15も年上とは思えないそのいたずらな笑みに愛おしさが込み上げて、また笑ってしまう。
バカにされたと勘違いした彼が「なーに笑ってんだ!」と私の頬を挟んで笑った。