美琴ちゃん、大丈夫?
私はハッ、と目を開けた。




「大丈夫?」




「……と、きやま、くん」






私はベンチに座ったまま、泣いていた。








「…ッ」




涙が溢れて止まらない。




「柊さん?どうしたの?何があった?」






その優しい鼻の詰まった声も





「何で泣いてるの…?」






私を心配そうに見つめる奥二重の目も




私の涙を拭うそのゴツゴツした手も




同じ




なのに









「……





ちが、う…」








私のか細い声が空気に触れて、時山君の耳に届いてしまう。







「え…?」





「ごめんなさい……




私、会いたい」







気持ちが溢れて、止まらない。




大好きで、大好きで、



どうしようもなく愛おしい人は








「時山君だけど…




時山君じゃない」










ここにはいない。






ずっと一緒にいようって、



約束した。







< 162 / 189 >

この作品をシェア

pagetop