美琴ちゃん、大丈夫?
時山くんが吹き出した。
「ブハ!どんどん増えてる!あはは」
『『『ピピピピピピ』』』
「あ、あ…えっと」
『ピッピピピピピピ』
鳴り響くその音に慌ててしまって、また増やしてしまう私。
『『『『ピピピピピピ』』』』
それにまた時山くんが笑って崩れ落ちた。
「あははは!…ヒー。落ち着いて、柊さん…!」
『『『『ピピピピピピ』』』』
「うん、うん、落ち着、落ち着こう」
鳴り響くストップウォッチ達に、とてもじゃないけど落ち着けなくてただあわあわする。
見かねた時山くんが、笑い過ぎによる涙を拭きながら立ち上がって私に近づいた。
「はー…貸して?」
時山くんが私の持つストップウォッチに触る。
う、わ
近い
史上最短距離
『『『『ピピピピピピ』』』』
近くで見る時山くんは
少し日焼けした肌がまだあどけなくフワフワしてて、
茶色がかった髪が光に透けてキラキラしてる。
さっき床に打ちつけた鼻はまだ少し赤い。
私のより大きくてゴツゴツした指で、
ストップウォッチをひとつずつ丁寧に確認していく。
私はじんわり汗をかく手でストップウォッチの紐をギュッと握りしめた。
『ピピピッ。』『ピッ。』『ピッ。』『ピッ。』
「…はい。」
時山くんのクシャッとした笑顔。
ハッと息をして、慌てて目を逸らした。
「あ、ありがとう…」
…息するの、忘れてた。