美琴ちゃん、大丈夫?
「柊さんでもテンパることあるんだね。」
「え、あ…いま、私テンパってた…?」
「うん。『テンパるとはこういうことです』って説明に使いたいぐらいテンパってた。はー、おもしろ。柊さん、ギャップすげーな。」
時山君はまた思い出し笑いをしてる。
…こんなに笑われるとなんか悔しい。
私はちょっとした仕返しを思いついた。
「時山くんは一年生の時、ステージでテンパってたね。」
時山くんが笑うのをピタッと止めた。
「えっ」
「文化祭でバンドのボーカル、してたよね?」
「し…てた、けど…」
「最後の大サビ、ミスってテンパってた」
「嘘!見てたの!?」
私は少し得意げに頷くと、時山くんが両手で顔を覆った。
「最悪だ。思い出したくない黒歴史…。」
ステージでテンパる時山くんを思い出して、つい笑いが込み上げる。
「フフッ。」
時山くんが笑う私を見る。
「でも、かっこよかっ…」
…あ
「…た、ょ。」
しりすぼみになっていく語尾。
…やらかした。
「…」
『かっこよかったよ』なんて
面と向かって言ってしまった。
また顔が熱くなって、時山くんの方を見れない。