美琴ちゃん、大丈夫?
「柊ー。本当に一人で平気?」


みんなが帰って真っ暗になった部室棟。

最後になった私、川崎、尾上君。

私は部室棟のカギを閉めながら口角を少し上げる。


「うん。大丈夫。私を誰だと思ってるの?」

「あー…我が高イチお強い柊美琴さんでした。んじゃ、お言葉に甘えて。また明日ー」

「うん。お疲れ。」


川崎と尾上君に手を振って職員室へと向かう。


…うまいことお邪魔しないで済んだ。

尾上君、頑張って。






職員室の先生に鍵を渡して、真っ暗になった校舎の中を抜けて校門へ向かう。

グラウンドのナイター練習用のライトがたった今、バツッ、バツンッ、と消えた。

野球部もこんな遅くまで残って…最後の大会に向けて大詰めなんだな。


うちの野球部は甲子園常連の有名校。

必然的に部員も多くなるため、大きな部室が別に用意されてる。


クラスにも野球部が何人かいるけど…こう言っちゃなんだけど、ちょっとチャラい人が多い。

ただでさえ人と話すのがあんまり得意じゃない私、少し距離を置いてしまう。


野球部の人たちとバッティングする前に帰ろうと、私は足を速めた。
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