美琴ちゃん、大丈夫?
「まぁ空手道部の中にはお眼鏡にかなう相手がいなかったってことでしょ?ってことは他にいんのかなと思って。」


「…」


…私の、好きな人?




その時突然、ある夜の景色が脳に飛び込んできた。














自分の家の前。


空気の澄んだ、吐く息が白くなる寒い夜。


少し離れたところで街灯に照らされながら、その人が可愛い笑顔で手をヒラヒラさせる。


その姿を見るだけで、私は胸が張り裂けそうに騒がしくなる。


…時山君?


いや、でも…なんか、






「柊?」


「!」

川崎の声にハッとする。


「どしたん、ボーッとして。」


「…いや、何でもない」


「大丈夫?疲れてる?…あんなことがあって…眠れてる?」


「あ、うん。大丈夫。ちゃんと寝れてるよ。怪我はしくじったなと思うけど、野球部の人たちのおかげでそっちの被害はなかったし」


「…」


「大丈夫だってば。本当によく食べてるし、昨日なんて夜9時に寝て朝までぐっすりだったよ」


「それは寝すぎだな?」


「うーん、なんか最近眠いんだよね。なんでかな。」


それにずっと夢を見ているような気がするのに、起きると忘れてしまう。


「…」


川崎がさっきよりもさらに心配そうな顔をしてる。


「もう、大丈夫だって!しつこいよ」


左手で川崎の背中をポンと叩く。


「イテ!!え?左手でその強さ?脳揺れたわ!」

「え?大袈裟だなぁ、ちょっと触っただけじゃん」

「えっ」

「えっ」


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