美琴ちゃん、大丈夫?
「ねー美琴。最近時山君とはどうなの?」


昼休み。
優花が大きなおにぎりをもぐもぐしながら聞く。


「…どうって?」


私は参考書から目を離さず、クリームパン片手に答える。


「君の本命でしょーが!みこっさん!」


「…」


せっかく考えることをやめて心が平和だったのに。

また2週間前のモヤモヤが胸に渦巻く。



「うぇ!?違うの!?…もしかしてキヨマサ君になったの?」

優花が盛大に米粒を吹き飛ばしながら驚く。


「いや…そうじゃないけど…」

私が口を濁しながら優花にウェットティッシュを渡すと、「すまんすまん」と言いながら机や床を拭いて私の次の言葉を待つ。


「…何もないよ。」


本当に、何もない。


あれから時山君とは会っていない。

こないだのHRで、時山君は県大会の5000m走で3位に入賞して、今度インターハイに出場すると先生が言ってた。

唯曰く、最近の時山君は長谷川さんと一緒にいることが多く
長谷川さんを「なんか苦手」と言う唯は交流が減ったらしい。



「まー、美琴がいいならいいけどさっ。美琴はたまに自分の心を押し殺す悪いクセがあるよ。あんまり自分を追い詰めちゃダメだよ?」


そう言って優花が私の頭をポンポンした。


…優花は優しい。

深く聞こうとせずやんわりと私の心をほぐそうとしてくれる。


「…うん。ありがとう。優花。」

「ふふ。どういたまして!はぁー、毎日勉強勉強で疲れちゃうねぇ。今度美琴の腕が治ったら気晴らしに遊園地でもいかない!?」

「…いいね。」

「お!?絶対断られると思ったのに!」

「勉強しながら遊ぶ。」

「え?どうやって?」

「問題集見ながら絶叫に乗る。」

「…クセがすごいな」





ピロロン♪



私のスマホが鳴った。

…この音、パンシテの通知?
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