美琴ちゃん、大丈夫?
ここまで、一瞬の出来事。




柊さんが小さく呼吸をして、サラサラの髪の隙間から凛とした強い目を内田に向ける。




そのあまりの美しさに、俺はゾクッと身震いした。






「…やめろ、くるな…!」





柊さんがジャラ…と手錠を揺らして歩み寄る。





「う、ウワァァーー!!」





内田が思い切り柊さんの右腕にバットを入れた。

バキィ!と派手な音がする。



怪我してた右腕に…!

野郎!!





「…」





柊さんは微動だにしない。


まだ治ってないはずの右腕を殴られたにも関わらず、怯む様子もなく内田に歩み寄る。




「は…?化け物かなんかなの…?」



内田がバットをカランと落とし、尻餅をついた。





「…知ってる?」



柊さんが内田の前で、ゆっくりとしゃがんで呟いた。



「え…?」




その表情は、無。





「急所って真ん中に集まってるの」



そう言って内田の顔を指さす。




「鼻と口の間の、人中。呼吸困難になって場合によっては重症。」



柊さんは指をツツ…と下におろしていく。




「顎。横からの強打で、脳震盪。」



「喉。これも呼吸困難。場合によっては中身が破裂する。」




内田は声も出せず、ゴクリと唾を飲み込んだ。




「みぞおち。呼吸困難になるし、すっごく痛い。大事な臓器がいっぱい入ってるから…ね?あとは…」




柊さんが、ゆっくりと内田の股間を指さした。




「ひっ…!」





内田は恐怖で震え上がった。




柊さんが整いすぎてる顔で言う。





「……どこからにしようか。」







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