美琴ちゃん、大丈夫?
私は、時山くんが気になって気になって、仕方がない。
一年生の時、全然接点がなかった頃
ひと目見てからなぜか気になって気になって、
目で追ってしまって
これが『好き』という感情なのか分からないけど
とにかく時山くんのことばかり考えてしまう。
それなのに、いざ目の前にすると緊張してさっきみたいに声が出なくなっちゃって…
唯の友達だというのに、未だにちゃんと話したことがない。
目が合うだけでなんかもう、胸がいっぱいになっちゃって、
「本当は時山くんとたくさんお話したいんだよねぇ。」
「!」
優花がいつのまにか机でぼんやりする私を横から覗き込んでた。
「……私きっと、変に思われてるよね。怒ってるかな…」
私は英語の教科書を抱きしめながら机に突っ伏した。
優花が私の髪をイジりながら頭の上に声を落とす。
「うーん…時山くんめちゃめちゃ良い人だから怒ってはないと思うけど、どうしてかなー?て心配はしてるかもね?」
「そっか…そうだよね。」
「というか、美琴がこんなに時山くんのこと考えてるって知ったら絶対すっごい喜ぶのにね」
「えっ、どうして?」
結構気持ち悪いぐらい考えちゃってるの、絶対知られたくない。
「どうしてって…美琴さん、あなた学年一…いや、学校一の美少女の自覚ないの?」
「え!?ないよ、ない!」
「…」
優花がなんとも言えない表情をして、私の肩を持った。
「いいかい、美琴……あなたは、美少女。
とっても可愛いくて綺麗で、頭いいしスポーツ万能の才色兼備。
おまけに素直で真面目でちょっと天然という最高に可愛い性格。
男子諸君からしたら高嶺の花的存在なのよ?
そんな美琴がだよ?
こんな緊張しちゃうくらい意識してますって言ったらね?
誰だってイチコロですよ???」
「…えっと……ありがとう…?」
「もう!お世辞で言ってるわけじゃないってば!」
優花がバン!と机を叩いて立ち上がった。
「おい羽根村ーHR始めるぞー」
寺田先生がいつのまにか教卓の前に立っていた。
「やーだー!!」
優花がごねる。
「はい、始めまーす」
先生が無視してHRが始まった。
「てらちんーーー!!」
子供みたいに地団駄を踏む優花。
「はい、そこのうるさい羽根村さん今日の授業あてまくりますからねー」
「ちょっとみんな!静かにして!てらちんが困ってるでしょう!」
「うるさいのはお前だけだ、羽根村。はい、今日の日直ー。」
起立、礼をした後、優花がまたコソッと耳打ちする。
「とにかく、美琴はめちゃめちゃ良い武器たくさん持ってるんだから。自信持って!んね!」