美琴ちゃん、大丈夫?
一発殴るだけでは気が済まなかった。
時山君の足。
大事な足。
高校最後の、インターハイ。
きっと毎日毎日、たくさん努力してきたはずで。
こんな最低なやつのせいで台無しになった。
…許せない。
許せない!!
私が構えに入った時、音楽準備室のドアが勢いよく開いた。
その音に驚いた内田がポケットからスマホを落とした。
「…!」
すぐに慌てて拾う内田。
でも、わたしには見えてしまった。
ある人とのメッセージ取引の画面が。
「美琴!」
「…唯。」
ドアノブに手をかけて立つ唯は私の目を見たまま、自分の後ろに向けて言った。
「…優花。美琴のリミッター切れてる。急ぎ先生呼んできて。」
「えっ?う、うん、分かった!」
後ろにいたらしい優花の走っていく足音がする。
「…美琴。ダメ。」
「唯。止めないで。」
「でも、」
「こいつだけは許せないの…!」
「そいつ、漏らしてる。」
「…」
股間に広がる水溜り。
「そいつ殺したら、美琴の気は晴れるわけ?」
「…晴れない」
「そんなことより、時山大丈夫なの?」
「!」
そうだ、時山君!
「…ッ。」
時山君は動けずにそこにうずくまっている。