美琴ちゃん、大丈夫?
私がいつものように支度をすると、お母さんが私の顔を見て「ちょっと大丈夫?やっぱり今日休む?」と心配してくれる。
「大丈夫。行ってきます。」
そう言って逃げるように家を出てバスに乗って電車に揺られ、
いつも通り唯、優花と合流した。
「…大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ありがと」
「美琴…」
2人ともすごく心配そうな顔で私の顔を見る。
昨日の事件よりも今朝の夢の方が私の心を乱しているんだけど、そんなこと言えるはずもない。
「本当に大丈夫。…確かめたいこともあるし。」
昨日、あの後病院で手当が終わると先生が事情を聞きにやってきた。
昨日襲ってきた男子たちは、人間関係がうまくいかずに不登校になった人達だった。
自暴自棄になって、今回のことを計画したらしい。
3人は今、警察で事情聴取を受けている。
あとは、私を音楽室に呼び出した、協力者。
…もしかしたら、本当の主犯はその人かもしれない。
私は、確かに時山君からパンシテを通じて呼び出された。
でも実際には時山君は私にメッセージを送っていなくて
私からの返信が来てすぐに削除されたのを見て、不審に思って探しにきてくれたのだと言う。
時山君のパンシテにログインして、なりすましてメッセージを送ったんだ。
パンシテの設定が『通知オフ』になっていたらしく、犯人が時山君に気づかれないように送ろうとしていたのがわかる。
もし時山君が気づかなかったら、私は多分あのままやられてしまって
時山君は共犯として疑いをかけられていたかもしれない。
…そう思うとゾッとする。
警察できっとすぐ、その共犯者はわかると思う。
私は内田のスマホのメッセージ履歴を思い出した。
…多分、その人。
「時山君のパンシテにログインしたのが誰かって、まだ分かってないんだよね?」
「…許せねぇ。時山使って呼び出すのも。美琴をこんな目に合わせようとしたのも。」
唯が静かに言った。
「…唯。冷静にね。」
「分かってるよ。」
…わかってなさそう。