振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「琴音、全部を話してもらおうじゃない…乾杯!」
「う…うん。…乾杯…。」
美優はビールの入った自分のジョッキを持ち上げると、私のジョッキにコツンとぶつけた。
私はビールをゴクゴクと2回飲み込んで、息を大きく吐いた。
そして、自分を落ち着けて、美優をジッと見た。
「美優…すごく恥ずかしい話も、呆れないで聞いてね…」
私の瞳をまっすぐ見つめてコクコクと美優は頷いた。
私は覚悟を決めて、美優に全てを話すことにした。
誕生日に彼に振られた話、彼が彼女を連れてきた話…そして公園で寝てしまったところまで、洗いざらい話してしまった。
しかし、すべてを話してみると、なぜか心はスッキリと軽くなっていた。
きっと私はこの話を誰かに聴いて欲しかったのだと思う。
すると、気づけば美優が大粒の涙をポロポロと流していた。
「美優、何でそんなに泣いているの…?」
「琴音…辛かったね…そんな男と別れて正解だよ。」
「…うん。美優ありがとう。」
そして涙を流していた美優は、しばらくすると、急に悪戯な表情に変わった。
「でもさぁ、氷室専務に助けてもらうなんて、すごい偶然だよね。…これは運命かも…ふふっ。」
運命とは大袈裟だが、確かに氷室専務が通りかかるとは、驚くような偶然だ。
あの公園に、なぜあの時間に専務が来たのかは、聞いてみたくなる。