振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「アジームさん、あなたと話すことなどありません。」
駿は静かに伝えると、向きを変えて歩き出した。
アジームは駿の背中に向かって話し始めた。
「氷室専務、あなた達は琴音を追いかけてここまで来ましたが、あなた達もまた追いかけられているみたいですよ。」
「…追いかけられる?」
アジームは、後ろを振り向くと、入口の方を指差した。
すると、そこには二階堂晴臣、祥子、そして駿の父親である氷室社長が立っているのが見えた。
(…なぜ二階堂親子がここに来ているの…)
アジームはもう一度駿を見ながら話をする。
「氷室専務、君も次期社長だったら、会社のことをもっと詳しく調べておく必要があるぞ。」
アジームの言っている意味が分からず、駿は言葉が出ないようだ。
すると、入り口から二階堂晴臣がゆっくりと歩いて近づいてくる。
「駿君、君はまだ自分の立場が分からないようだね。君の婚約者は祥子だぞ。悪いがその女から離れてくれないかな。祥子が悲しがっている。」