振られた私を御曹司が拾ってくれました。
真実
アジームはボイスレコーダーを、祥子が届かないよう手に持って高く持ち上げた。
背の高いアジームに、祥子の手が届くはずもない。祥子は悔しそうな表情でアジームを睨んだ。
「祥子さん、何をそんなに焦っているのですか?…やっと気が付いたようですね。」
アジームはクスクスと祥子に向かって笑いを浮べた。
「僕は変装が趣味なんでね…あなたは私を海外から来た、ただのビジネスマンだと思ったのですよね…なかなか僕もイケメンのビジネスマンだったでしょ。」
祥子はアジームに騙されていたようだ。
アジームは部下が調べた内容の証拠が欲しくて、祥子に近づいたのだ。
面食いのイケメン好きだった祥子は、変装したアジームに誘われすべてを話してしまったようだ。父親の晴臣の企みも全てアジームに話してしまっていた。
祥子は開き直ったように話をした。
「その声が私だという証拠はないでしょ!」
アジームはさらに妖しく笑みを浮かべて、叫ぶ祥子の頬に手を添えた。
「僕たちの秘密を見せたくはないけど…あなたがそこまで言うならお見せしましょうか。このボイスレコーダーは、ベッドの枕の下に隠してあったのだが、それを僕が隠しているところから、部屋は録画しておいたんだよ。あなたが僕にかなり情熱的に迫っている映像も残っているけどね…」
アジームが秘書のカシムに合図をすると、部屋の壁に何かの映像が映し出された。
それは部屋でアジームがボイスレコーダーをカメラに見せながら、ベッドに隠している映像から始まった。
その部屋に祥子が入ってくると、祥子は自分からアジームに抱き着いて、口づけをしている。
祥子は映像の映し出されている壁の前に立ち手を広げた。
「お願い!もうやめて!許して!」
映像は、ベッドにアジームを祥子が強引に押し倒したところ迄で、カシムは映像を止めた。
その後、ボイスレコーダーの音が大きな音量で再生された。
祥子の自慢気な声が部屋に響き渡る。
父親の晴臣は中東に進出する話を持ち出し、中東の権力者と株式会社サーティーサーティーの両方から、口利き料としてお金を集めていると祥子は話をしてしまっていた。そしてさらに、晴臣はそのことを餌にすれば、氷室駿は祥子との結婚を急ぐだろうという計画まで話をしている。
いくらイケメンに弱いとはいえ、どれだけ口が軽いのだろうか。
アジームの誘導尋問もあるが、全てを話してしまっている。
祥子はその場に崩れ落ちるように、ペタンと座り込んで項垂れた。
すると突然、二階堂晴臣は祥子の腕を掴み、足早に部屋から出ようとした。
しかし、入り口には執事が待ち構えており、戸は閉められてしまった。