振られた私を御曹司が拾ってくれました。
氷室社長は、ハンカチを受け取らない私の涙を、優しく拭ってくれた。
「琴音さん、これからはあなたが駿の一番近くで支えとなってあげてくれ…今回のことで、私は代表を退くことにする。会社は駿に任せたい…だからあなたが駿を助けて欲しい。」
「…社長」
「父さん!」
私と駿は、同時に声を上げた。
氷室社長は笑顔を浮かべて、私と駿の肩を優しく叩いた。
「父さん…琴音を認めてくれて…ありがとう。」
暫くして、横から “コホッ” という咳払いが聞こえた。
私達が振り返ると、アジームが咳払いをしていた。
「なんだか、僕を無視して皆で幸せな感じなんですけど…」
アジームは両手を広げてお道化て見せた。
「駿君、琴音、…おめでとう。良かったな。」
アジームは全て計画していたのだろうか。
だとしたら、私達はまんまとアジームに騙されていたということだ。