振られた私を御曹司が拾ってくれました。
早いもので、アジームの一件から月日は流れて、もう半年になる。
相変わらず駿は忙しく、休日もままならない状態だ。
駿は父の言葉通り、専務から社長に就任した。
最近では、マスコミにもイケメン社長として取り上げられるほどだ。
しかし、私は駿を信じているし、支えると決めたのだから寂しいとか、心配とは思っていない。
私自身も、スイーツ開発事業部でチームリーダーになり、新しいスイーツの開発やイベント開催などで忙しくしていた。
大好きなスイーツの仕事だから、忙しくてもやりがいがある。
そんな日々の中、駿がいつも通り朝の珈琲を飲みながら、私に話があると言ってきた。
私も自分の珈琲をカップに入れて、駿の座っている正面の椅子に座った。
淹れたての香ばしい珈琲の香りが二人の間に広がっている。
「琴音、今週末は休めるのかな?」
「うん。今週はイベントも無いし…私は大丈夫だよ。」
「じゃあ、金曜日の夜から泊りで行きたいところがあるんだ。一緒に来てくれるかな?」
駿の話に私は自然と笑顔になった。
駿が一緒に出掛けたいと言ってくれている。
考えてみれば、お互い忙しくて、ろくにデートすら出来ていない。しかも泊りと駿は言っている。
これ以上嬉しいことは無い。
…金曜日、そろそろ終業時刻が近づいている。
突然、駿がスイーツ開発事業部に入って来た。
駿の登場に、周りはザワザワとしている。
「葉月さん、今日は定時で出られるのかな?」
「…はい。その予定ですが…。」
「…そう。では駐車場で待っているから、準備が出来たら来てくださいね。」