振られた私を御曹司が拾ってくれました。
桐生さんは、エレベーターに乗り込むと、最上階のボタンを押した。
最上階のボタンはカードキーが無いと押せないようになっている。
桐生さんは、スーツの内ポケットからカードキーを取り出し、エレベーターのパネルにかざした。
恐らく、その部屋のキーを持つものだけしか行かれないのだろう。
そして、エレベーターが最上階に到着してドアが開くと、そこはもう部屋の中だ。
部屋は大きなガラスの窓で囲まれており、夜景がとても美しい。
周りの建物の明かりが、キラキラと反射している。
私は、ホテルのこんなに大きな部屋は初めて見た。
部屋はいくつかの部屋に別れている。いくつ部屋があるのだろうと思ってしまう。
思わず、私は声を出してしまった。
「うわぁ~すごいお部屋!」
すると、桐生さんはクスッと笑いながらこちらを向いた。
「もう少しすると、氷室専務がいらっしゃいますので、それまでご自由にお寛ぎください。」
桐生さんは、それだけ伝えると、部屋から出て行ってしまった。
一人残された私は、窓ガラスに近づき、外を見渡した。
下を見ると、車のライトがキラキラとしながらつながって見える。
白いヘッドライトと赤のテールライトがそれぞれ繋がり、光る二重のネックレスのように美しく見える。
そして、上を見ると、星がキラキラと瞬いていて、ちょうど真正面には細くなった三日月が明るく光っていた。
「本当にすごい…こんな景色がみえる部屋があるんだ…素敵だなぁ~」
すると、誰もいないはずの後ろから声が聞こえてきた。
「気に入ったか?」
私は驚いて振り返った。誰もいないと思って言った独り言も恥ずかしい。