振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「ひ…ひ…氷室専務!いつのまに…いらしていたのですか!」
私は顔が急に爆発したように熱くなった。きっと真っ赤になっているだろう。
「君があまり熱心に景色を見ていたから、声を掛けられなかったよ…子供のように喜んでいて、見ていて楽しかったぞ。」
「そ…そんな…恥ずかしいから言わないでください。」
氷室専務は、ハッハッハと楽しそうに笑っている。
偉い人なのに、とても親しみやすい笑顔だ。
すると、秘書の桐生さんがケーキのような箱を、いくつか持って部屋に入って来た。
「葉月さん、桐生に頼んでチョコレートケーキをいくつか買ってきてもらったぞ、…それとここの料理長に頼んで、さっきのパーティーで出されたチョコレートケーキも用意できた。これで少し元気は出るかな?」
桐生さんはテーブルにお皿を並べると、そこにチョコレートケーキを丁寧に置いてくれた。
パーティーで出されたチョコレートケーキはもちろんのこと、その他のケーキも皆、美味しそうなチョコレートケーキだ。ケーキの箱を見ると、有名パティシエの店も含まれている。
「…氷室専務!凄いです。どれも美味しそうで、見ているだけで幸せになります。」
「どうぞ、召し上がれ。」
氷室専務は、ニコリと笑みを浮かべてケーキの皿を私に手渡した。
まず渡されたケーキは、ここのホテルのチョコレートケーキだ。
近くで見ると、繊細なシュガーパウダーが上に乗っていて、実に美しい。
食べてしまうのが勿体ないが、私はそのケーキにフォークを刺し込んだ。
パリパリッと音を立てて、チョコレートが割れる。
中はトロッと柔らかいチョコレートソースが入っているようだ。
私はそのケーキを口に含んでみる。
カカオの良い香りが口の中いっぱいに広がった。
「ん~ん~ん~」
堪らず声が漏れた。最高に美味しく幸せだ。
ゴクリと飲み込むと、自然に笑顔になる。
「君は、本当に美味しそうに食べるんだな…用意した甲斐がある。」