振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「氷室専務、すごく美味しくて…幸せです。有難うございます。」
氷室専務にチョコレートケーキの御礼を伝えて、ハッとした。
先日の公園の御礼を忘れていたのだ。
「あ…あの…先日は、公園で助けて頂き、ありがとうございます。」
「あぁ…もう気にするな…無事だったのだから、それでいい。」
「それと…お聞きしたかったのですが…氷室専務は…なぜ、あの時、公園にいらっしゃったのですか?」
私の質問に、氷室専務は少しの時間なにも言わなかった。
聞いてはいけない事だったのだろうか?
氷室専務は、ゆっくりと話し始めた。
「あの日は、僕はニューヨークから戻ったばかりだったのだが、父親から食事に誘われたんだよ…その時、ちょっと父親と喧嘩になってしまって、僕は食事会から出てきてしまったんだ。イライラしながら歩いていたら、ちょうど小さな公園があったので、頭を冷やそうと中に入ったら、女性がベンチで倒れていていたんだ。…驚いたよ。」
「そんな大変な時に…申し訳ございませんでした。」
すると、専務は私を気遣ってくれたのだろうか、ふわりと優しい笑顔を向けてくれた。
「葉月さんのお陰で、驚いたせいか、父親にイライラしていたことを忘れたよ。あれから冷静になれた気がする。父が言っていることも、間違ってはいないんだよ。」
詳しい事は分からないが、きっと一般の私達とは違って、氷室専務の住む世界は大変なのだろうと感じた。
親子と言っても、これだけ大きな会社の社長と専務なのだから、背負うものも大きいのだろう。