振られた私を御曹司が拾ってくれました。
少しの沈黙の後、話し始めたのは彼だ。
「あ…あ…あのさ…琴音、突然だけど……………別れて……欲しいんだ。」
「…っえ?」
「琴音には悪いと思っている。なかなか言い出せなかったんだ…実は…彼女のお腹には……俺の…………子供がいるんだ。」
何が起こったのだろう。
頭が真っ白になった。
状況が理解できない。
「琴音、このとおりだ…」
彼が私の前で、深々と頭を下げている。
少しずつ、何が起きたのか、解ってきた。
彼は私に別れてくれと、頭を下げているのだ。
私は何も言わず、立ち上がった。
「お…お幸せに。」
声が震えた。
心にもない言葉を言うしかなかった。
作り笑顔も、かなり強張っていただろう。
手足がカタカタと震えている。
惨めな姿は見せたくなかった。
震える手にグッと力を入れる。
私の精一杯のプライドだ。