振られた私を御曹司が拾ってくれました。
準備ができると、急に心臓がドクドクと鳴り始めた。
氷室専務は、この料理を見て何と言うのだろうか。
いろいろ考えると、不安になってくる。
すると、エレベーターが到着の音を知らせる音を鳴らす。
“ポーン”
滑らかにエレベーターが開くと、そこには氷室専務の姿があった。
「葉月さん、待たせてしまったね。」
氷室専務は、私を見つけると、申し訳なさそうに部屋に入って来た。
スーツ姿で仕事だったようだ。土曜日も仕事で忙しそうだ。
「あ…あの…お口に合うか分かりませんが、お食事を用意してみました。」
すると、氷室専務は嬉しそうに用意したテーブルに近づき、目を大きく見開いた。
「すごい!葉月さんの手作りハンバーグだ。早速、いただいても良いかな。」
氷室専務は、スーツの上着だけを脱いで、椅子に座った。
私は急いでハンバーグの仕上げに取り掛かる。
ハンバーグに、持ってきたデミグラスソースをかけて、ご飯をお茶碗に盛り付けた。
家庭料理が良いと氷室専務は言っていたので、お皿のライスではなく、お茶碗にご飯という感じにしたかったのだ。
「…どうぞ、お召し上がりください。」
「それでは、頂きます。」
氷室専務は両手を合わせて挨拶をすると、嬉しそうにハンバーグをお箸でつまんだ。
そして、一口大のハンバーグを口に入れる。
(…味は大丈夫かな?…心配…)
私は自然と祈るようなポーズで、氷室専務の反応を待った。
氷室専務の喉から、ゴクリと飲み込む音がする。
「美味い!…すっごく美味しいよ!!」
氷室専務が笑顔になった。
(…よかったぁ…とりあえず合格かな?)
「こんなに美味しいハンバーグは久しぶりだ。優しい味がする。」
「すごく心配だったのですが、良かったです。…よろしければご飯のおかわりもあります。」
「もちろん、おかわりも頂くよ。葉月さんは料理上手なんだな。」
氷室専務は、おかわりのご飯も全て食べてくれた。
美味しそうに食べてくれると、私も嬉しくなる。
すると、思いついたように氷室専務が話し始めた。
「葉月さん、これからもご飯を作ってくれないかな?もちろん持ってきてくれとは言わないから…僕が葉月さんの家に行っても良いかな?」