振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「…っえ…氷室専務が、うちにいらっしゃるのですか?」
私は驚いて大きな声を出してしまった。
うちは小さなアパートで、氷室専務に来てもらえるような部屋ではない。
「氷室専務、ご飯を作るのは構わないのですが…うちは小さなアパートなので、氷室専務に来ていただけるような部屋ではありません。」
「僕は気にしないよ。…じゃあ決まりだね。」
氷室専務は勝手に決めて笑顔で頷いている。
“気にしない”と言われても、私のほうが気になる。
「そ…そんな…勝手に決めないでください…部屋も狭いですし…無理です。」
すると、氷室専務は急に悪戯な表情になった。
「じゃあ…これから葉月さんの家まで送って行くから、ちょうどいいな。」
氷室専務は、困っている私の腕を掴み、グイグイと歩き始めた。
片手には、車のキーのようなものも持っている。