振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「今回のスイーツのコンセプトは “ホッとする優しさ” です。なぜならば……」
審査会議が始まり、今回のコンセプトの説明をした。
しかし、部長をはじめ、幹部社員は首を傾げている。
「葉月君、なんかインパクトが余り感じないな、余りにも平凡すぎないかな?」
部長は今回のスイーツにあまり良いイメージが無いようだ。
確かに他社に比べれば、平凡で地味かも知れない。
すると、氷室専務が手を上げた。
「少し意見を良いですか?僕は平凡が、むしろ求められるのではないかと思うのだが、どうだろう。他社が強烈なインパクトなら、うちはホッとできる優しさで押すのも、一つの戦略だと思いますが、いかがでしょうか?」
部長をはじめ、皆が頷いている。
専務に言われると反論しずらいようだ。
(…氷室専務は助けてくれたんだ…)
審査会議は、氷室専務の意見のお陰で、無事に終了した。
今回のスイーツは全て発売することになったのだ。
会議が終了し、私は急いで氷室専務を追いかけた。
「あの…氷室専務、先程は助けて頂き、有難うございました。」
氷室専務は振り返り、目を細めて微笑んだ。
「いや…助けたのではない。あのスイーツと君のコンセプトが良いと思ったから意見しただけだ。」
「有難うございます。」
私が深々とお辞儀をすると、専務は片眉を上げた。