振られた私を御曹司が拾ってくれました。
「琴音は、この部屋を使ってもらおうと思うが、どうかな?」
駿はリビングの横にあるドアを開けて見せた。
すると、そこにはすでに可愛いソファーや、女性らしいカバーが掛けられたベッド等が用意されていた。
そして、部屋の中に入ってさらに驚いた。
大きなクローゼットは開けると、中はウォークインクローゼットになっており、そこには女性もののドレスや鞄などが入っている。
「あの…駿、このドレスとか用意されている物は、どなたのものでしょうか?」
すると、駿は少し照れたように顔を赤くして、口元を押さえた。
「琴音が一緒に住んでくれると思ったら、少し浮かれてしまってね…実家の若いメイドさんに頼んだんだ。琴音の趣味が分からないから、もし嫌なら買い替えるよ。」
「そ…そんな…私のために、揃えてくださったのですか?」
駿がここまで用意してくれているとは、驚きを超えて、何と表現してよいのかも分からないほどだ。
ここまでして貰っては、断ることはできない。
「…駿、有難うございます。何とお礼を言って良いのか分からないのですが…とても嬉しいです。」
駿は、私の言葉を聞くと、満面の笑みで私の手を握った。
「琴音、ではルームシェアを了承してくれるんだね!」
私がコクコクと頷くと、握った手を上下に振って、駿は喜んでくれる。
その顔を見ると、私まで嬉しくなってしまう。
私を、必要としてくれる人がいると思うだけでも幸せだ。
ただ、ふと頭の中に不安が浮かんできた。
もし、私と駿が一緒に住んでいることが、会社にバレたらどうなることだろう。
考えたら、急に心配になって来た。
特に、会社の女性たちが知ったら、大変な事になりそうだ。
「駿、一つだけお願いがあるのですが…私と一緒に住んでいることは、絶対に会社には、内緒にしてくださいね。」
「…うん。わかった。琴音がそうしたいのなら、絶対守るよ。」