振られた私を御曹司が拾ってくれました。

翌日、仕事中の私に外線の電話が掛かって来た。


「葉月さん、アパートの大家だという人から外線ですよ。」

「はい、葉月です。」


電話の相手は大家さんの奥さんだ。何かと口うるさいが、面倒見が良い人だ。


「葉月さん、あなたの部屋を解約するっていう男性が来たんだけど、大丈夫なの?」

「か…解約って…その男性は誰ですか?」

「あぁ、名刺くれたけど、…桐生とか書いてあるわよ。」


大家さんのところに行ったのは、秘書の桐生さんのようだ。
私は電話を切ると、急いで秘書課へと走った。

(…なぜ、桐生さんが、アパートの解約なんてするの…)

秘書課には数名の女性と、桐生さんがちょうどデスクに座っている。
私は桐生さんのデスクの前へ走った


「桐生さん!今、大家さんから電話が来て!!アパート解約って、どういうことですか?」


慌てる私とは対照的に、桐生さんは冷静だ。


「氷室専務から、葉月さんの引っ越しや手続きを依頼されました。なので、アパートは今週いっぱいで解約致しました。」

「こ…こ…今週って…今日はもう金曜日ですよ。この週末で引っ越しを済ませるのですか?」

「はい。私と運転手の清水がお手伝いに伺います。あと…女性が必要でしたら、専務のご実家のメイド達を呼びましょうか?」

「…そんな…急に言われても…」


確かに、駿と同居の約束はしたが、こんなに急な話になるとは思っていなかった。
思っていた以上に、大変な事になって来た。

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