振られた私を御曹司が拾ってくれました。

――――――翌日。


朝早くから、駿の実家で働く20代前半の女性が二人、引っ越しの手伝いに来てくれた。
恐らく、私よりもずっと若そうだ。まだ少しあどけない笑顔が、とても可愛い。
二人は動きやすいジーンズと、上にはパーカーを羽織っている。
選ぶ服装からも、年齢が若いと感じる。

「葉月さん、私は相原と言います。氷室家でメイドをしています。」
「同じくメイドの多田です。今日はよろしくお願いします。」


二人は、氷室家のメイドだという。氷室家はいったい何人の使用人が居るのだろうか。
分かってはいたが、駿は相当なお坊ちゃまなんだと感じる。


「わざわざ来てくださって有難うございます。助かります。」


私がお礼を言うと、二人は笑顔で返してくれる。
すると、二人は思いがけない事を言う。


「葉月さん、羨ましいです…駿さんと同棲されるのですよね。」


同棲と言われて慌ててしまった。顔が真っ赤になるのが分かる。


「ち…違いますよ!同棲ではなく、ルームシェアで同居させていただくだけなんです。」


すると、二人は不思議そうな顔をする。


「それは、同棲と違うのですか?同じ家に住むのですよね?」


確かに言われてみれば、そう思われても可笑しくはない。
しかし、本当にただの同居なのに、誤解されては駿にも迷惑を掛けそうだ。

そして、私達が荷造りをしていると、桐生さんと運転手の清水さんも到着した。

駿の運転手をしている清水さんとは、話をするのが初めてだ。
年齢は40代くらいだろうか、お父さんという感じの優しそうな人だ。

< 35 / 128 >

この作品をシェア

pagetop