振られた私を御曹司が拾ってくれました。

最後の荷物を、手配してもらった、引っ越し専門業者のトラックに乗せて、引っ越しは終了。
私は思わず大きく息を吸い、手を空に向かって伸ばし深呼吸した。

(…なんとか終わったよ…)


すると、後ろから誰かが私の名前を呼んだ。


「琴音、遅くなってごめん。」


声を掛けたのは駿だ。

突然の駿の登場に驚いたが、私は笑顔で引っ越し終了の報告をした。

「お疲れ様です。皆さんに手伝ってもらったから、思ったより早く終わりました。いろいろありがとうございます。」


駿はスーツ姿で、仕事帰りのようだ。
忙しい中、駆けつけてくれたのだ。


「仕事を早く終わらせて、琴音を手伝う予定だったのに、悪かったな。」


駿の姿を見て、桐生さんが驚いたように近づいてきた。


「氷室専務、今日は仕事のあと、接待の会食があったのでは?」


すると、駿はクスッと笑い悪戯な表情をした。


「最初から、接待に行くつもりなんて無かったよ。引っ越しの手伝いに来るつもりだったんだ。」


桐生さんは、その言葉を聞いて、少し呆れた表情をした。


「あなたという人は…困った人ですね。そんなに葉月さんがご心配なのですか。」

「もちろん。大切なルームメイトだからな。」


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