振られた私を御曹司が拾ってくれました。

考えてみると、スーパーマーケットで食品のお買い物なんて、別れた彼とも行ったことは無かった。
カラカラと音を立てて、駿は買い物かごをカートに乗せて押している。

カートを押す姿も、素敵に見える。イケメンは何をしても画になる。


マーケットの中を進むと、試食を配る女性が、声を掛けてきた。


「奥様、新しいチーズです。ワインによく合いますよ。ご主人もどうぞお召し上がりください。」


私は、奥様と言われて急に恥ずかしくなった。私と駿が夫婦に見えたのだろうか?
しかし、駿は何も気にしている様子は無い。
試食が美味しいのか、一口食べて口角を上げた。


「琴音、このチーズは凄く美味いよ。今日はこれでワイン飲もうよ。」
「は…はい。そうしましょう。では、他にもワインに合いそうな物を作りますね。」


なぜか、少しくすぐったい気持ちにはなるが、なんだか幸せだ。
駿と一緒にいると、安心できるし、すごく楽しい。

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